ノーベル賞の「クリスパー」と RNase
(1) クリスパー(CRISPR) 発見の元になった大腸菌のDNA配列
クリスパーとは、石野良純教授という人が、1987年に大腸菌の遺伝子の中に発見した奇妙なDNA配列のこと。その後、2002年頃にその意味を解明する手がかりが発見され、2020年のノーベル賞につながる研究が動き出した。
CRISPR (ウィキペディア)
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(2) 大腸菌はどのようにウイルスのDNAを破壊するのか?
ウイルスDNAを破壊して来た大腸菌の進化をたどると、
@ 大腸菌の遙か先祖の細菌は、自分の中に侵入したDNA病原体(バクテリオファージ、一種のウイルス)を、自分のDNAヌクレアーゼ(デオキシリボヌクレアーゼ、DNアーゼ、DNase)で破壊できた。
ヌクレアーゼ (ウィキペディア)
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デオキシリボヌクレアーゼ (ウィキペディア)
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A 次に、大腸菌は、破壊した病原体のDNAの一部を自分のDNAの中に取り込むことができた。
この大腸菌が取り込んだDNAを見つけたのが石野良純教授です。
B 更に大腸菌は、取り込んだ病原体のDNAを使って、新たに侵入した病原体をもっと効率的に破壊する仕組みを持つことができた。偶然の重なりのようにして、大腸菌は進化して来た。
その仕組みは、大腸菌が考えてつくり上げたわけではありません。 そのような仕組みを偶然に持った大腸菌が、無数の大腸菌の中から今日まで生き残って来た、ということです。
(3) なぜクリスパー(CRISPR) の技術が生み出されたのか?
大腸菌についてそのようなことがわかったのは、多くの研究者がDNAという花形のテーマについて競って研究し続けていたからです。
そこでたまたま石野良純教授が大腸菌の遺伝子の中に変なDNA配列の部分を1987年に見つけたのです。
その後、大腸菌の遺伝子の中に取り込まれたDNAは、侵入した病原体を破壊する仕組みとして働いていることが発見されました。
そこから、クリスパー(CRISPR)の技術が生み出されました。多くの研究者がDNAについて研究し続けていたからです。
その一方で RNaseは?
(1) RNaseを研究しても、新しい発見などないと皆が考えている。
RNA は単純で、知り尽くされているので、研究しても、論文にはならないと研究者たちが考えている。 DNAのような花形のテーマではないので、研究者たちはRNA に興味を持たない。
(2) RNAよりDNAの方が壊されにくい。それなのに、大腸菌がウイルスのDNAを破壊することがわかっていても、RNase がRNAウイルスを破壊することを、研究者たちは深く考えない。
研究者たちはRNA には興味がないからです。DNA についてもわからないことがまだたくさんあるけれども、RNA にもわからないことがまだたくさんあるはずです。
大腸菌のDNAヌクレアーゼ(DNase)が、DNA病原体のDNAを破壊する。 それなら、人間のRNaseは、人間の細胞に侵入したRNAウイルスのRNAをもっと破壊する。
大腸菌のDNaseが、DNA病原体のDNAを破壊することがわかっても、研究はそこから方向を変えて、研究者たちの関心は遺伝子工学だけに向かってしまっているのです。
もちろん、RNase が、DNaseのように、細胞に侵入したRNAウイルスの、壊れやすいRNAを破壊するとは、誰も考えないし、関心も持ちません。
奥山眼科では、「科学で最も重要なものはテクノロジーだ」と考えている人を、"technologiot" 「テクノロジーばか」 と呼びます。
Technologiot = Technology + Idiot
感染症専門医は、考える力がない人たちだと私は思っています。
RNase が、人に感染したコロナに働くことを、世界中の誰も考えつかなかったのです。
日本の社会を破壊したのはコロナではなく、日本の感染症専門家たちです。
(2020.10.12)
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